・山笑う・春愁・翁草(おきなぐさ)

私の歳時記 No.63

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山笑う

■↑新緑というにはやや早い感じ。笑う山。■もやもやのもっこり感・・あいまいな山?。



山笑う

故郷(ふるさと)やどちらを見ても山笑ふ(子規)

 「山笑う」・・いまどきの日本語なら「山笑」と省略されそうな季題です。

 原典は中国・北宋の画家・郭熙(かくき)の「山水訓」、
〈 春山淡冶-たんや-にして笑うが如く、
 夏山は蒼粋-そうすい-にして滴る-したた-るが如し。
 秋山は明浄-めいじょう-にして粧-よそお-うが如く、
 冬山は惨淡-さんたん-にして眠るが如し 〉
からの引用とか(出典を『臥遊録』とする説もあります)。

山笑う=春
山滴る=夏
山粧う=秋
山眠る=冬

 春、花々が咲き、木の芽、物の芽がいっせいに芽吹くと、山は眠りからめざめたように、もっこり丸みを帯び、色づきます。新緑というにはやや早く、色とりどりの木の芽が吹いた山を「笑う」と見るのが面白いのです。

山笑ふ中に富士見て下りけり(長谷川零余子)


生活実感として

 山里に暮らしてみると、山が笑うというのは実感的にわかる気がします。

 しかし、木の芽時というのは「気」にはよくないと言われるとおり、春は愉快なばかりでもありません。近年、花粉症などアレルギー性疾患が急増し、春は埃っぽく、花粉、黄砂などに悩まされる人も多い季節です。

春愁
 私には、春愁を通り過ぎて憂鬱な季節でもあります。ただ、老骨に春の暖かさはありがたいとも思います。
 まあ、笑えるうちは笑うのがいい・・?

春愁やくらりと海月くつがへる(加藤楸邨)*海月=くらげ

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翁草(おきなぐさ)

 ながく親しんできた翁草の群生地。この土手に数百本はあるでしょう。
 今年もたくさんの花をつけ、早いものはすっくと伸びてヒゲをはやしています。たんぽぽと同じように羽毛で種子を飛ばします。
 花が俯いているのは元気がないのではなく、翁草の特徴です。(キンポウゲ科)

 髭は、これからもっと白く長くなり、その数も増えます。髭が増えるところが老骨とちがうところ・・。
 その白い毛が「翁」の髭に喩えられた名。

 下の写真は、別の場所の翁草。土手へ植栽してあり、肥がいいのかひとかたまりの株になっています。


翁草咲きそろいけり山笑う(愚しぐれ)

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