・枯葉・柿(木守柿)・冬いちご・日向ぼこ・フユノハナワラビ・短日

私の歳時記 No.32

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「・・歳時記」索引

初冬の山里を歩く

 ▲上の写真は、左から>丘と遠山>柿の木に止まる烏>冬いちご>日向ぼっこをするトカゲ>茅の紅葉と穂



枯葉舞う

 丘の木の下に立てば、枯葉が音をたてて舞い落ちていました。風の冷たさに首をすくめます。

落葉踏むけふの明るさあすもあれ(水原秋桜子)

落葉して木々りんりんと新しや(西東三鬼)


、ふたたび

 すぐ近くの柿が鈴なりです。この柿は、これほどたくさん実をつけているのに、枝が「たわわ」にしなっていません。
 柿は奈良時代に渡来したと言われます。かつて柿は、もっとも身近な果物でした。

難民に似て競輪に柿齧る(百合山羽公)


木守柿

 全部取ると翌年不作になるという言い伝えから、梢または上の方の1個だけを取り残し、これを「木守柿」と呼んだそうです。
 ただ、「門徒文化」のこの地方では、余りそんな呪いは信じられてこなかったと思います。「門徒もの知らず」文化・・


陽だまり・日向ぼこ

 丘の南側を辿ると、風当たりの弱い陽だまりがあり、冬イチゴや曼珠沙華(彼岸花)の葉叢れが目に付きます。

 今年は、冬イチゴもたくさん実をつけています。多く食べる気にはなりませんが、ちょこちょことつまめばおいしい果汁が口に甘酸っぱく広がります。

 ふと、側を見ると、トカゲが日向ぼこをしています。じっとして動きません。暖かい時期ならとっくに逃げていたでしょう。今年はよく見かけました。猫の hana が大好物にしているらしいこともわかりました。

うとうとと生死の外や日向ぼこ(村上鬼城)

 白い蝶も日向ぼこをしていました。やがて、寒さの中で凍蝶になるのでしょう。
 


フユノハナワラビ

 草紅葉の陰に、冬のハナワラビが穂を出していました。(ハナワラビ科 ほかにナツノハナワラビがあるという。葉が蕨に似ており、胞子のうが穂状に立ち上がる。)
 この地方では、あまり見かけない気がします。この株は、今年の天候に恵まれて株も大きいようです。

枯野

 吹きさらしの土手を辿ると、季節が冬に入ったことが実感できます。

 美しい白い穂が揺れています。初夏、芒種の頃にいちど穂を出した茅(ちがや)が、今年最後の穂をつけて紅葉しています。
 ふつうとりえのない草として見過ごされてしまいますが、茅は刈られても刈られても新しい葉を伸ばしつづけます。その根は「茅根 ぼうこん」という漢方の薬種になるようです。
 子どもの頃、この花穂が出る前の穂を抜き取って食べました。かすかな甘みがあってガムのようにかんだのです。

 

 畦の土はふっくらとして、歩けば気持ちいいやわらかさが伝わります。

遠山に日の当りたる枯野かな(高浜虚子)


日が沈む方向

 あと1ヶ月で冬至です。
 11月22日、日没は、この地方が17時ちょうどくらい。ただ山間ですからもっと早く日没となります。

 短日と夜長もきわまります。
 太陽が沈む山並みもずいぶん南よりになりました。

日短かやかせぐに追いつく貧乏神(一茶)

 「短日」は、日短(ひみじ・か)とも使い、暮早し暮易しと同じです。

 逆に夜のほうから言うと、夜長なのですが、なぜか「短日」が冬の季語で、「夜長」は秋の季語とされています。
 これは日永(春)と短夜(夏)の使い方と同じ関係です。

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