・半夏生・ハンゲショウ・カキラン・ヤマホトトギス・ホタルブクロ・ツユクサ・ノアザミ

私の歳時記

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半夏生



半夏生
 半夏生(はんげしょう)は、夏至から11日目、72候の第30候、八十八夜や土用などとともに雑節(ざっせつ)の一つです。江戸時代には、この日までに田植を終えるとされていたようです。
 2006年は7月2日。梅雨降る中で迎えました。
 この日に降るのが半夏雨で、降ると大雨が続くという迷信があるそうです。
 その梅雨の晴れ間、野に出ることができました。

水がめに虫の湧きたり半夏生(上村占魚)


ハンゲショウ
 野草としてのハンゲショウは「半化粧」の意味です。花が咲くとき、花穂をつける葉が半分ほど白くなり、花と見まちがう感じになって、それを半分化粧する、と見立てたのです。この白変した葉が花びらのかわりをして虫を誘う、といわれています。とすれば、半化粧にはそれなりの合理的な意味があるわけです。しかも、ちょうど半夏生の頃、花をつけます。ドクダミ科。(写真は植栽)
 俳句では、これを「半夏生草」として夏の季語とする説がありますが、これは混乱の原因になりそうです。
 別名、三白草(みつしろそう)・片白草(かたしろそう)。

 歳時記の類には、ときにこれを「裏白」と混同し、新年の飾りに使う羊歯(しだ)の別名とするなど間違い[半白⇒片白⇒裏白・・]が多いので、このまま季語としないほうがいいように思います。「亀鳴く」や「蚯蚓鳴く」などとは異なる誤りです。


カキラン
 カキラン(柿蘭)が雨の中、咲きはじめていました。
 小さな花です。写真2枚目が実物よりやや大です。
 花の色とつぼみの形が柿に似ています。実に地味な蘭です。
 湿地の草の間、日当たりのいい場所にすーっと花茎を伸ばして咲いています。
 野の花コレクション「カキラン」へ>>


ヤマホトトギス
 カキランの隣り(写真上から2枚目)に「ホトトギス」の株がつぼみをつけています。
 別の場所、はやくも初めの花が咲いていました。
 これからの季節、しばらく花ホトトギスが楽しめます。
 よく似たものに、ホトトギス、ヤマジノホトトギス(山路の・・)があります。

 ホトトギスが葉のわきに2〜3個の花(1個の場合もあり)をつけること、葉が長楕円形であるのに、こちらは、茎の先に花をつけること、葉が丸みを持つことなどが違います。さらに、ヤマジノホトトギスとは花序が枝分かれしていることで見分けるといいようです。それにしても、3種ともよく似ています。

 開花の時期は、ホトトギス、ヤマジノ・・が8〜10月で、本種より少し遅いようです。そのため、俳句では、秋の季語とされています。杜鵑草とかいて「ほととぎす」と読みます。この地方では9月下旬に咲きはじめます。
 ホトトギスの異名は、ほととぎすそう、漢名・油点草。


ホタルブクロ
 ホタルブクロ(蛍袋)も咲きはじめました。
 キキョウ科の野草で、よく知られた花です。この地では白い花が多いのですが、薄い赤紫がかったものも見られます。
 名の由来は、子どもが捕った蛍をこの花の中に入れて遊んだという説と、花の形を提灯の別名「火垂る袋」に見立てたという説がありますが、どちらもありそうな気がします。ただし、体験的にはこれに蛍を入れるのはむつかしい感じです。

 数日前、家の前にも蛍(ゲンジボタル)が出ていることに気づき、また、とある川沿いの谷間で、たくさんの蛍を見ることができました。かすかに子どもの頃に見た蛍を思い出しましたね。

夕風に蛍袋のひとかたまり(細見綾子)


ツユクサ
 露草は、秋の季語ですが、梅雨の頃から咲きはじめます。
 古くから花びらを布に摺りつけて摺染(すりぞめ)などにしましたが、一回限りで落ちてしまい、露と同じくはかないものとされたようです。古くは「ツキクサ」の名です。ツユクサ科。
 別名、異名が多く、代表的なものが、
ほたるぐさ(蛍草)
、つきくさ(月草)、うつしぐさ(移草)、漢名・おうとうそう(鴨頭草)。
詳しくは、>>野の花コレクション「つゆくさ」>>へ。

露草の瑠璃十薬の白繁り合へ(石田波郷)
 *この句の場合「十薬」が季語で夏。
露草や飯噴くまでの門歩き(杉田久女)
 *飯噴く(いい・ふく)門(かど)
くきくきと折れ曲りけり蛍草(松本たかし)


ノアザミ
 アザミ(薊)は、ニホンに50以上の種類があるといいます。
 なかでノアザミ(野薊)は代表的。春花と夏花は少し様子が違うようです。単に薊なら春の季語。「夏薊」として夏としますが、実際にはアザミのほとんどが秋に咲くと言われます。
 いつも思い、言いもしますが、自然の移り変わりは「人事」(じんじ=俳句の場合「人のすること」くらいの意味です)とは違って、線で引いたように分別できないことがあります。そこに「季語」というものの無理が生まれます。

くもり来しひかりのなかの薊かな(久保田万太郎)

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