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杉田 久女
花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ
(はなごろも・ぬぐ・や・まつわる・ひも・いろいろ)
1919(T8)年。初期代表作。俳句をはじめて3年の作である。妖艶、大胆な作風で、大作家の片鱗が見える。
足袋つぐやノラともならず教師妻
(たび・つぐ・や・のら・と・も・ならず・きょうし・つま)
1921(T10)年作。「ノラ」はイプセンの小説・戯曲の主人公の女性。スキャンダラスな印象を与える。
朝顔や濁り初めたる市の空
(あさがお・や・にごり・そめ・たる・いち・の・そら)
1927(S2)年作。市の空を「にごりそめる」と描写したその感性は、鋭く、屈託している。
谺して山ほととぎすほしいまま
(こだま・して・やま・ほととぎす・ほしいまま)
1931(S6)。別記→。
蝶追うて春山深く迷いけり
(ちょう・おうて・はるやま・ふかく・まよい・けり)
1936(S11)、突然の「ホトトギス」追放直後の作。蝶とは、虚子または俳句そのもののことかもしれない。
作者自身が混迷する春山のクレイジーな空気が感じられる。
■杉田久女 プロフィル
1890(M23)〜1946(S21)没年55歳。
久女が俳句をはじめたのは1916(大正5)年。
句作3年で、
<花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ>
を得る。のち1931(S6)、「花衣」を創刊・主宰。その誌名はこの句に由来する。