◆住宅 顕信
すみたく・けんしん(1961〜1987)
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1987年、
〈ひとりの男が岡山の病院でひっそり逝った
享年25、自由律の俳人だ
10代はリーゼントにサングラス。つっぱっていた
16歳で歳上の女性と同棲。22歳のとき出家得度、そして結婚
翌年、白血病を発症。離婚。病室での育児。3年後、死去〉
(住宅顕信読本「若さとはこんな淋しい春なのか」)
顕信がゆいいつ残した句集が『未完成』である。
◆顕信10句@
たちあがればよろめく星空
鬼とは私のことか豆がまかれる
気の抜けたサイダーが僕の人生
血の乏しい身体の朝のぬいてゆかれる血
淋しい犬の犬らしく尾をふる
ずぶぬれて犬ころ
背中丸めてねむる明日の夢つつんでおく
黒衣一枚、凡夫である私が歩いている
念仏の口が愚痴ゆうていた
月が青いまっすぐな道をゆく
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■顕信のこと
住宅顕信(すみたく・けんしん)
1961年 岡山生まれ。
高校には行かず、調理師学校ではたらきながら学ぶ。
1980年 市役所に勤務。同僚と仏教について熱心に話す。
1983年 22才 西本願寺で得度、浄土真宗僧侶となる。同じ年、結婚。
1984年 23才 急性骨髄性白血病になる。外来で受診し、即日入院。
入院後、妻が妊娠していたことが分かる。病院で俳句を始める。
1984年 妻、出産。そして離婚。
病室で育児しながら俳句に夢中となった。
1986年 一度だけ退院するが、約3ヶ月でふたたび、入院。
1987年 2月、死去。満25才10ヶ月。
1988年 句集『未完成』刊行。自由律俳句281句所収。
(つづく)